目線の上につきまとう湯気

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目線の上につきまとう湯気

林間学校を楽しみにしていた 幼いながら知恵を絞り 力を合わせて栞を作り上げた時 ロン・ハワードが長編小説を纏め上げた瞬間と 恐らく変わらない達成感に満ち満ちていた ついでに魔法の呪文も携えた ちろりろりん 長期休みの宿題は最終日になって 焦り喚く種族に生まれついたが 今回ばかりは違う 数日前からお気に入りのリュックサックに 略 百々のつまり 前日に風邪を引いた 小学生が楽しみにしているイベントの 前日に風邪を引くメカニズムは 今だ解明されていない七不思議のひとつだ この七不思議については いずれその全てを紹介する 林間学校1日目 クラスメイトと先生は山へ芝刈りに お婆さんは川へ洗濯に 出れるはずなどない お婆さんも芝を刈りに行きたかった それどころかその口回りを純血混血で汚し 魂を狩る吸血鬼の気持ちだ これほど学校、林間学校だから学校でいいだろう に行きたいと思ったことは後にも先にもない いや、先はわからないよ 諸君 夜には体調が回復し 明日から追って参加出来ることになった 待ちに待った飯盒水産だ 林間学校2日目 ヒーローが颯爽と現れる ピンチになってから現れる 黄色い声援が病み付きになるそれが解るようなクラスメイトの出迎えが待っていた 今日ばかりは自分がヒーローだと勘違いしても許された 昨日まであれほど恨んでいた細菌に感謝した 細菌に感謝するのはこの先何度かある 行きたくないバイトのシフトの日には助けられた ありがとう 細菌 結果的に 林間学校は楽しかった しおり 細菌 友達 呪文 幸運 飯盒 吸血鬼 どのお陰かわからないけれど わからないから 全部にありがとうと言えてしまうほど 思い通りにならない今日に 思いを越える明日が待っているなら 味をしめた細菌が幾度となく顔を出そうと 味をしめた吸血鬼が魂を狩りに来ようと 飯盒から掬い上げられた つやっつやの米から沸き上がる湯気が 目線の上に付きまとう限り 明日に期待してしまうのだ
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