それは、夢

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それは、夢

子どものころから、不思議な夢を見ました。 空飛ぶ夢を見たことのある人は多いでしょう。 空を飛ぶ爽快感は、夢のなかならではです。 初めは体が重く、地面とスレスレに浮かぶことしかできませんでした。 もっと高く。もっと、もっと高く。 意識するにつれ、どんどん高くまで飛ぶことができるようになりました。 一メートル。 近所の軒下くらい。 二階の屋根の上。 そして、高校生のころには、大空を鳥のように飛ぶことができるようになりました。 夢のなかのわたしは、ほかの人には見えないようでした。 ごくまれに、わたしのことを見える人がいます。 わたしを見ると恐怖にふるえました。 怖がるようすが、夢のなかでは、なぜか、とても楽しく感じられました。 見知らぬ学校の夕方の校庭。 わたしを見て逃げまどう女の子を、追いまわしたこともあります。 恐怖に歪む顔が、とても心地よい。 あるとき、わたしは山のなかで、とても立派なお屋敷を見つけました。母屋は、きれいな、かやぶき屋根です。 そのお屋敷を見たとき、どうしても、なかへ入ってみたくなりました。 なんだか、なつかしい。 真夜中なので、家のなかは、しんと寝静まっています。     
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