第4章

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彼はあの火事の日と同じように、厳かな様子で、真っ赤な生命を抱いた。 泣いて、そして笑い、その小さな体を優しく包み込んだ。 赤ん坊も泣いている。 まるで何かを叫んでいる様だったが、それが元気な証なのだと彼は安心した。 (くそっ…またここに逆戻りかよ…) ああ、今のは赤ん坊の心の声だ。 勿論、彼には聞こえていない。世の中には知らない方が幸せなこともある。 彼は笑い、赤ん坊は泣き喚いている。 彼は───知らない。
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