第1章

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「チョコで大丈夫。ありがとう、いくらだった?」 ────ハッとして、彼は恋人の方を振り返った。 「今のは…」 そう呟き、彼は右手に握られた紙くずを見つめた。 「どうしたの?」 上目遣いの彼女が首を傾げた。 「……いや、何でもない。」 「そう?暑さでぼーっとしてるのかと思った。で、いくらだったの?」 「高くないからいらないよ。……もしかしてこれが、白昼夢ってやつかな。」 「白昼夢を見た人なんて初めて会った。ねえ、どんな夢?」 「いや……夢っていうか、そんな気がしただけ、って感覚。でも妙にリアルで、一瞬目の前が真っ暗になった。」 「…日射病じゃない?…どこか涼しいところに入ろっか。」 彼はポケットに右手を突っ込み、ぎこちなく頷いた。
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