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「チョコで大丈夫。ありがとう、いくらだった?」
────ハッとして、彼は恋人の方を振り返った。
「今のは…」
そう呟き、彼は右手に握られた紙くずを見つめた。
「どうしたの?」
上目遣いの彼女が首を傾げた。
「……いや、何でもない。」
「そう?暑さでぼーっとしてるのかと思った。で、いくらだったの?」
「高くないからいらないよ。……もしかしてこれが、白昼夢ってやつかな。」
「白昼夢を見た人なんて初めて会った。ねえ、どんな夢?」
「いや……夢っていうか、そんな気がしただけ、って感覚。でも妙にリアルで、一瞬目の前が真っ暗になった。」
「…日射病じゃない?…どこか涼しいところに入ろっか。」
彼はポケットに右手を突っ込み、ぎこちなく頷いた。
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