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チャイムの鳴り響く放課後の校舎。
家路を急ごうとする生徒や、部活動へ向かう生徒達の喧騒を耳にしながら、廊下の片隅で私はスマートフォンの画面を見つめていた。
ただ単に『見つめていた』だけで特に操作はしていないけど。と言うか、操作するフリをしているのだけれど。
だって、私は気が気じゃない。
私の前を通り過ぎてゆく喧騒達の中に微かに混じる黄色い色めきだった声。それに私は耳を澄ませる。嬉しそうに廊下を駆けだしながら女子たちが目的の場所へ向かうのを目の端に捉えた。
彼女たちの向かった先には1人の男性。声をかけられて振り返ったその人は少し照れながらも優しい微笑みを彼女たちに向けた。
「宮野先生、これ調理実習で作ったんです。食べてくださいね」
「私のもーー」
語尾にハートマークが付きそうな甘い声を出しながらも我先に受け取ってもらおうとする女の子たち。
その渡されたプレゼントを受け取りながら、宮野先生と呼ばれたその人は困ったような笑みを見せる。
なによ。鼻の下伸ばしちゃって。
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