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◇第三章 見えない獣
「良樹、最近付き合い悪いぞ」
「あー……ごめんな、ちょっと仕事立て込んでて」
隔週の類会に、月三回くらいのペースで飲みに行く友人も姿を見せていた。良樹は精一杯困ったような顔をして見せる。類会の後に同年代で飲みに行くこともあれば、仕事の後に行くこともあったが、今は土曜日の予定を全て亨に抑えられている。ちらりと横目で伺うと、何食わぬ顔で、亨も最近ようやく打ち解けてきた同年代の獣人達と何らかの話に花を咲かせていた。
「商社も大変だよね、まぁ時間出来たらまた飲み行こう?」
いつもならそれなりに嬉しい女友達からの誘いでさえ、今は憂鬱な気さえした。
結局なんの手を講じることも出来ないまま、良樹は毎週土曜日、亨に呼ばれてホテルへと向かうハメになった。類会がある週は普段くらいのペースでの参加を求められた上、普通に接することを要求されている。そして類会が終わったら別々にホテルに向かう。類会がなければ……夕方には呼び出しのメッセージがスマートフォンに届く。断ることも考えたが、今の所それには至っていない。亨からのメッセージには、毎度「急な用事で来られないのであれば電話をください」と書き添えられてはいるが、探りを入れられるのではという疑念が拭えなかった。
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