◇第三章 見えない獣

5/6
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
 享が良樹の前に回り込む。まるで値踏みするかのような視線を向けながら、不意にしゃがみ込んだ。 「獣化中は敏感になりやすいっていいますけど、浜田さんもそうなんですか?」  首を傾げながら問いかけられたが、答える余裕はない。確かにそういう傾向はある。獣化前の状態は言わずもがなであり、獣化後も基本は獣化前と似たようなものだ。だが獣化中はどうしてか身体の感覚が研ぎ澄まされたようになり、衣服のちょっとした凹凸や毛羽立ち、壁や床に皮膚が擦れるとむず痒さを感じる。個人差はあるが、少なくとも良樹は少しくすぐったく感じる方だった。 「……浜田さんて、本当可愛くないですよね」  可愛くある必要があるか、と思うが早いか、良樹は息を詰めるハメになった。ぎゅ、と突然むき出しの逸物を握られたのだ。しかもそれを手のひらの中で、ゆるゆるとさするように弄ばれる。それが意図しているのは当然そういう行為だろう。だからこそ良樹は混乱した。半分ほど獣化状態にあるので確かにいつもより感じている。少し擦られるだけで背伸びを始めた。 (最悪だ……)  絶望的な気分になり、良樹は肩の方にぐいと頭を向けてなるべくその現状から気を逸らそうとした。相手が誰だか分かっていて、先ほどまで怒りに血が上っていた頭であるはずなのに、勝手に血流は股間に集まって行く。気持ちは、いい。やがて享は左手で竿の部分を擦り、右手で先端をくるくるとこねくり回すように撫で回し始めた。しっかりと勃ち上がったそれもやはり半ば動物の形になりかかっており、先端がやや尖って括れのところまでうっすらとトゲが浮かび上がっている。享の指がその凹凸に触れながら、どこか楽しげに擦り上げて行く。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!