◇第四章 歪み

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 拘束されては快楽責めにされ、それでいて何を求められることもない……そんなことが、さらに半年も続いた。類会のある週にも早い時間から呼び出されるようになり、羞恥心に打ちひしがれる時間が少しずつ長くなっていった。さらには初めて一月以上顔を出さないことにもなり、日曜以外にプライベートな友人と過ごす時間もほとんどなくなる。連絡先を知っている友人から、最近どうしたんだと連絡も来ていた。適度に返すそれに混ざって、当たり前の用にホテルの場所を指定するメッセージが一緒に届く。逃げ出せたらどんなにいいだろうか、いっそ、そうしてしまおうかと、何度も考えた。だがユキヒョウという獣人種は全体の人数が少ないため、流出すれば本人だけでなく、家族や他人のユキヒョウに迷惑をかける可能性があり、その選択肢は最初から潰されていた。実に用意周到で狡猾な手段だと唸りながら、良樹はホテルへと向かう。その意識の裏に、亨の手の感触がちらついているのは見ないフリをした。
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