31人が本棚に入れています
本棚に追加
人が、記憶を持ったまま生まれ変われるようになった時代。
俺はジャック・ザ・リッパーの生まれ変わりとして、生を受けた。
本来生まれるはずじゃなかった、犯罪者。
どうやら科学者の手違いで俺はシリアル・キラーの記憶を持ったまま、生まれてしまったらしい。
今は魂と記憶を物質化し、それをそのまま「処女懐胎」することが当たり前になっている。
俺の母は科学者だ。もちろん父はいない。遺伝子的には母と基本的に同じだが、唯一性別だけは、男。これは選べないらしい。
「なんてこと、悪魔を産んでしまうなんて」
母は恐ろしくなったのか、抱きしめて欲しい、愛して欲しいと手を伸ばした俺を置いて、いなくなってしまった。
俺が何をしたというんだ。
生まれ変わる前が、たとえ人殺しだとしても、俺は何も、していないのに。
*
高校生になり、『特殊クラス』として生まれ変わりだけが集められるクラスに入った。
そこで俺は――「天使」と呼ばれる少年に、出会った。
柔らかなプラチナ・ゴールドの髪に、ふっくらとした顔。きらきらと光を弾くアクアマリンの瞳に、桃色の唇。外見からして天使。彼はナイチンゲールの生まれ変わりらしい。
俺も思わず、遠巻きにその少年に見惚れていた。
そうしたら――その少年は、俺に手を差し伸べてきた。
「初めまして、これからよろしくね」
嬉しかった。病気や怪我に苦しむ人を救う、優しいナイチンゲールの生まれ変わりとなら、俺は生まれて初めて友達になれるかもしれない……!
そう喜んでいた俺は、その日、少年に犯された。
*
夕方、ナイチンゲールの生まれ変わりに呼び出されて校舎裏に向かう。
「ごめん、待たせちゃって。ええと……?」
「ナイチンゲール。それか天使でいーよ。その方が覚えやすいだろう?」
「そっか、それじゃあ……」
「なあ君、僕に童貞捨てさせてくれよ」
にやりと凶悪に笑う、天使。
「は……っ?」
「言い寄ってくる女の子は多いのにさぁ、みーんな俺をてんしー、だとかナイチンゲールさまー、だとかあがめるばっかりで、少しもやらせてくんないの。まあ俺も天使っぽさが無くなっちゃうから?そうそう周りの女の子に手は出せないんだけど?」
じり、とナイチンゲール……いやナイチンゲールに失礼だ!!確か名前は、ええと……変わった名前だったな……とぎり、斗桐だ!そいつが近づいてくる。
「い、いやだ」
最初のコメントを投稿しよう!