天使?

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人が、記憶を持ったまま生まれ変われるようになった時代。 俺はジャック・ザ・リッパーの生まれ変わりとして、生を受けた。 本来生まれるはずじゃなかった、犯罪者。 どうやら科学者の手違いで俺はシリアル・キラーの記憶を持ったまま、生まれてしまったらしい。 今は魂と記憶を物質化し、それをそのまま「処女懐胎」することが当たり前になっている。 俺の母は科学者だ。もちろん父はいない。遺伝子的には母と基本的に同じだが、唯一性別だけは、男。これは選べないらしい。 「なんてこと、悪魔を産んでしまうなんて」 母は恐ろしくなったのか、抱きしめて欲しい、愛して欲しいと手を伸ばした俺を置いて、いなくなってしまった。 俺が何をしたというんだ。 生まれ変わる前が、たとえ人殺しだとしても、俺は何も、していないのに。 * 高校生になり、『特殊クラス』として生まれ変わりだけが集められるクラスに入った。 そこで俺は――「天使」と呼ばれる少年に、出会った。 柔らかなプラチナ・ゴールドの髪に、ふっくらとした顔。きらきらと光を弾くアクアマリンの瞳に、桃色の唇。外見からして天使。彼はナイチンゲールの生まれ変わりらしい。 俺も思わず、遠巻きにその少年に見惚れていた。 そうしたら――その少年は、俺に手を差し伸べてきた。 「初めまして、これからよろしくね」 嬉しかった。病気や怪我に苦しむ人を救う、優しいナイチンゲールの生まれ変わりとなら、俺は生まれて初めて友達になれるかもしれない……! そう喜んでいた俺は、その日、少年に犯された。 * 夕方、ナイチンゲールの生まれ変わりに呼び出されて校舎裏に向かう。 「ごめん、待たせちゃって。ええと……?」 「ナイチンゲール。それか天使でいーよ。その方が覚えやすいだろう?」 「そっか、それじゃあ……」 「なあ君、僕に童貞捨てさせてくれよ」 にやりと凶悪に笑う、天使。 「は……っ?」 「言い寄ってくる女の子は多いのにさぁ、みーんな俺をてんしー、だとかナイチンゲールさまー、だとかあがめるばっかりで、少しもやらせてくんないの。まあ俺も天使っぽさが無くなっちゃうから?そうそう周りの女の子に手は出せないんだけど?」 じり、とナイチンゲール……いやナイチンゲールに失礼だ!!確か名前は、ええと……変わった名前だったな……とぎり、斗桐だ!そいつが近づいてくる。 「い、いやだ」
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