さよなら、花嫁。

10/21
前へ
/23ページ
次へ
ずっと無表情というか、落ち込んでるというか、そんな表情だったから。 ー…美味しいものって、いい仕事するじゃん。 正直、台風と賄いをくれた店長に頭を下げたいくらいだ。 ちら、ともう一度彼女を見る。 頑張って平常心を保っているつもりなんだろうけれど、先程までとは明らかに表情が違う。 ただ、夏川さんの新しい部分を引き出したのが、俺自身ではないというところが、少し腹立たしかった。 …変なの。 さっきまで全然知らない人だったのに。 ほんの少しの笑顔で、こんなにも俺は振り回されている。 口元が緩んでいるのを見られたくなくて、左手だ押さえ続けていると、彼女が不思議そうに俺を見た。 「…あの、体調悪いんですか?」 「え?!いや、全然!」 「…でも、顔赤いですし…あ、私がお風呂借りちゃったから、もしかして熱とか」 彼女はパンをすぐに机に置くと、すぐに俺に近寄ってきた。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加