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ずっと無表情というか、落ち込んでるというか、そんな表情だったから。
ー…美味しいものって、いい仕事するじゃん。
正直、台風と賄いをくれた店長に頭を下げたいくらいだ。
ちら、ともう一度彼女を見る。
頑張って平常心を保っているつもりなんだろうけれど、先程までとは明らかに表情が違う。
ただ、夏川さんの新しい部分を引き出したのが、俺自身ではないというところが、少し腹立たしかった。
…変なの。
さっきまで全然知らない人だったのに。
ほんの少しの笑顔で、こんなにも俺は振り回されている。
口元が緩んでいるのを見られたくなくて、左手だ押さえ続けていると、彼女が不思議そうに俺を見た。
「…あの、体調悪いんですか?」
「え?!いや、全然!」
「…でも、顔赤いですし…あ、私がお風呂借りちゃったから、もしかして熱とか」
彼女はパンをすぐに机に置くと、すぐに俺に近寄ってきた。
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