さよなら、花嫁。

16/21
前へ
/23ページ
次へ
今どき、そんなことがあるのか、と思った。 「だから、自分のこと大切にするなんて、今更なんです。本当は結婚なんてしたくないけど、逃げ出す勇気もなくて。だから…塩生さんと…したって何も変わらないんです」 泣きそうだった。 声が、震えていた。 俺はやっぱりまだ子供で、こういう時にどう声をかけるのが正解なのかは、わからない。 でも。 「だからって、自分を否定する理由にはなりませんよ」 少し、嫌だと思った。 夏川さん自身が、自分自身の存在を否定してることが。 「ー…ねぇ、夏川さん」 俺は今、できる限りの笑顔を作った。 「俺、多分夏川さんのこと好きです」
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加