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「ー…え」
夏川さんは、目をまん丸にした。
…俺に見せていなかっただけで、本当は表情がコロコロ変わる人なのかもしれないな、なんて思う。
たくさんの表情を見てみたい、とも思う。
「でも、俺には夏川さんを奪って、どうにか出来る財産力も、強さもありません。残念ながら無理です」
それが無理なのは、誰よりも自分が知ってる。
「相手の人のこと、嫌いですか?」
俺の質問に、夏川さんは首を振った。
「ー…なら、俺はその人に夏川さんのこと、任せたいなって思います。順序は逆になるかもしれないですけど、それなら好きになれると思いますよ。時間をかけてでも」
俺に、彼女の幸せを決めることはできないけど。
でも彼女のこれからの人生のことを考えれば、きっとこれがベストアンサーだ。
「綺麗事かもしれないですけど、俺はそれでもいいと思います」
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