さよなら、花嫁。

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「じゃあ、客用布団出してきますね」 「ありがとうございます」 俺も、夏川さんも、決して暗い言葉を口にしなかった。 お互いのために。 自分のために。 こんなのあんまりだと思うかもしれない。 きっと友達なんかに言ったら、お前何考えてるんだと言われてしまうかもしれない。 それでも、彼女が望むなら仕方ない。 ー…それは、俺も望んでいるから。 「ー…どうぞ」 「ありがとうございます」 「一応この間干したんで、かび臭いとかないと思いますけど」 「お借りしてる身なんで、文句は言いませんよ」 「そうですか」 「それじゃあ、もう時間も時間なんで、寝ますね」 「はい、俺は寝室行くんで」 「わかりました。それじゃあー…」 俺たちは、わかっていた。 きっと自分たちが交わす、最後の言葉だろうと。
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