さよなら、花嫁。

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「結構あるんで好きなの選んで食べてもらっていいですよ。あ、この塩パン我ながら超絶品なんでオススメです」 袋から塩パンという名の、塩のかかったクロワッサンを取り出して渡す。 彼女は恐る恐る受け取ると丁寧にビニールを剥がしていく。 俺は俺で、珍しく売れ残ったカレーパンを取り出してぱくりと食べた。 …うん、やっぱうまい。 ひとり無言でもぐもぐと食べ進めていると、隣から囁くように小さな声が聞こえた。 「…おいしい」 彼女の方を向くと、少し頬を緩めて、塩パンを見ていた。 目がキラキラと輝いていて。 …なんだこの生き物。 戻しそうになったカレーパンを押し込むように、左手を口に添えた。 ー…可愛い。 笑うとあんなに可愛かったのか、夏川さん。
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