はじまり

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自己紹介が始まり、多くの人が当たり障りなく無難な自己紹介をして最低限の情報を開示していく中で、何人かの人が笑いを取りに行くも、全員がこの緊張の空気の中では、良くてややウケ、大抵はスベって終わって行った。 そして、当り前だが私は無難な自己紹介を選択し、自己紹介を終えてひと息つくと、君の声が聞こえた。 この時の私の席はクラスの一番後ろの席で、それまではボンヤリと自己紹介をする人たちを眺めていたのだけれど、私は君の声を追って君を見つけた。 これが私の君との出会い。 ただ、この時は出会いと言っても私が一方的に君を知った時というだけで、本当の意味での2人の出会いはこの後になる。 君は自分の方言を気にしていたみたいだから、私は今までに言った事は無かったけど、君はこの自己紹介の時に方言が出ていたの気づいていたのかな。東北や関西みたいな強い方言じゃなかったけど、君の声と少しマヌケな君の方言はちぐはぐで、一生懸命自己紹介をする君をほんのちょっとだけど可愛いと思った。 私は容姿の優れているか劣っているかで人を判断することはないけれど、一応は格好良いか、格好悪いかは分かるし、もし仮に友人以上の関係に進むのなら格好良い方が良い。 ただ、緊張した様子で他の人たちと同じように自己紹介をする君は決して格好良いとは言えなかったけど、大柄な体を小さくして、緊張で下手くそに笑う君を私は嫌いじゃなかった。
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