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「叔父さん、伯母さんの服を出して何しているの?」
水村さんが帰ってからトイレに飛び込んだ。
もう限界寸前だったからだ。
気持ち良く用を足して、何気に寝室を覗いた。
襖が少し開いていたからだ。
でも声を掛けられた叔父は相当驚いたようだ。
「びっくりしたなー」
叔父は慌ててそれらをぐちゃぐちゃにしていた。
「もしかしたら女装?」
俺の言葉に頷いきながら目を光らせた。
一瞬ヤバイと思った。
でも後の祭りだったようだ。
「丁度いい。瑞穂、これを着てみてくれ」
叔父は笑いながら、ワンピースを俺に渡した。
「や、ヤだよ。女装なんかヤだ。俺の高校、校則が厳しいんで有名なんだ。そんな格好したら退学間違いなしだ」
俺はそれを畳んで箪笥の前にそっと置いた。
叔父の奥さんの大事な形見だから粗末には扱えなかったのだ。
ついでに、さっきの服にも手をかけた。
「気付かれないようにすればんだ。もし退学になったなら骨は俺が拾ってやる」
「又その話。高校辞めて手伝えって言うの? 悪いけど俺の夢はサッカーだ。きっとエースになってみずほを喜ばせてやるんだ」
「又みずほちゃんか?」
「俺はみずほが好きなんだ。だってみずほは俺と同じ高校を選んでくれたのだからね」
「そうか、だからみずほちゃんは彼処を……」
「本当はもっとレベルの高いトコに行けたのにな」
「そんなみずほちゃんに贈り物をしたくないか? 手伝ってくれたら給料弾むぞ」
「じゃあ聞くけど……あのね叔父さん。俺に給料くれたことがあんの?」
「無かったか? ほらお正月に……」
「あれはお年玉でしょ。全く仕方ないな」
俺は笑いながらワンピースを手にした。
「上村さんと水村さんのこともあるから、俺も一肌脱ぐか」
「良く決心した。じゃあ早速これも」
叔父は自分の持っていたワンピースを押し付けた。
「うぇー、やぶ蛇だった。結局俺だけか」
頭を抱えたまま、上目遣いで叔父を見ると嬉しそうに笑っていた。
「さぁ、覚悟を決めて」
叔父の言葉に促され、結局ワンピースに袖を通すことになった。
「やっぱり似合う」
満足そうに叔父が笑っていた。
「ねぇ、叔父さん。まさかこれを着て外出させる気じゃないよね?」
「当ったり!!」
叔父の目が更に輝いた。
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