ボーンヘッド・木暮敦士side

2/6
前へ
/230ページ
次へ
 首が落ちている。 いや、落ちて来た。 それも突然俺の目の前に降ってきた。 「わー!! 首だー!!」 俺はまず飛び上がってからワナワナと震えた。 そんな状況を目の当たりにして驚かないヤツはまずいないだろう。 ぶったまげると言うか、目ん玉が飛び出ると言うか…… 俺は肝を潰して、その場で立ち竦んでいた。 でもそれは、普通の首ではなかった。 俺の首だったんだ。 全てが無防備だった酬いなのか? 俺は慌てふためいた。 何がどうなっているのかさえ判らない。 第一首が落とされても意識があるってことが不思議だった。 俺は以外にも冷静に、自分の首だと思える物体を見つめていた。 もしかしたらマネキンかも知れないと思ったのだ。 (きっとマネージャーの演出かなんかだ? それにしても良く出来ている? あれっ、マネージャーは俺の頭がこうなっているの何時知ったんだ?) その答えを出した時、俺はワナワナと震え出した。  (違う、これは俺の頭だ。間違いない。ってことは? 俺はもう死んでいる?) 俺はやっと判断した。 (んな馬鹿な? そんなことある訳ねー!! 俺の脳は、彼処に転がっている頭の中だよな? だったら、何で見えるんだ!? それによー、これで最期だったら最悪だー!! せめてファンの前で歌わせて欲しかった。そのために此処に来たのに!) そう俺は、新曲イベントのために此処に来たのだ。  それはデパートの従業員専用のエレベーターの前だった。 デパートでもスーパーでもそうだと思うけど、従業員専用の駐車場や出入口などは必ず有る物らしい。 俺は其処の従業員でも出入りの業者でもない。 売り出し中のロックシンガーで、地下にある控え室から上がって来たところだった。 今日は此処のCDショップでライブパフォーマンスする予定だったんだ。 だからその前にちょっと買い物をするつもりだったんだ。 長年付いてきてくれるファンさえも気付くはずもないヘアースタイルだったから俺は安心しきっていたのだ。  (俺は一体どうなってる!? 体は……? 頭は……? 彼処にあるのが本当に俺の首なのか? 解らない……判らない……どうやって俺はこの状態になったんだ!?) 俺は、まだ現実さえ把握出来ていなかったのだ。
/230ページ

最初のコメントを投稿しよう!

47人が本棚に入れています
本棚に追加