表の顔と裏の顔

2/6
前へ
/230ページ
次へ
 殺された警察官には、常に悪い噂がつきまとっていた。 でも叔父は全く気付かなかったそうだ。 叔父は探偵という仕事上、警察官と対峙する。 不審者扱いや変質者に間違えられて通報されたりするからだ。 元警視庁の刑事だった肩書きなんて通じない。 そんな時、あの警察官が手を差し伸べてくれたそうだ。 だから叔父は信頼していたのだ。  「今回だけはヤバいと思ったよ。調べてる相手が殉職した警察官だからな」 叔父はそう言いながら探偵ノートを示してくれた。 うっすらと額に汗が見える。 叔父の苦労を垣間見た気がした。 「叔父さん、この乾燥大麻って?」 「交番に保管してあった物なんだって。どうやら紛失させたようだな」 「もしかしたら亡くなった警察官が関与していたとか?」 俺は聞いてはならないことを言っているようだ。 そう思いながらそっと叔父を見ると静かに頷いた。 「アイツは自分が所持していた拳銃で撃たれた。不名誉だけど、職務中に死亡したことには違いないんだ……」 俺は息を飲みながら、次の言葉を待った。 「瑞穂には何時も慎重に行動しろと言っていたのに、俺は我を忘れていた」 「変質者に間違えられたの?」 やっと口を開いたと思ったら的外れな質問をしていた。 「違う。そんなんじゃない!!」 珍しく叔父が声を荒げた。 「アイツはその大麻を使って冤罪をでっち上げ、金銭を要求していたんだ」 「もしかしたら和也さんも?」 「連行されるのを同僚が偶々見ていたそうだ」 その発言に俺は声を詰まらせた。  「俺の推測だけど、水村さんの流産にも関与しているらしい」 その言葉で俺は黙ってしまった。 どうやら叔父は探偵だと名乗らなくてはいけない羽目になったようだ。 「瑞穂お願いだ。俺の顔はバレている。後のことは頼んだ」 「もしかしたら女装?」 心なしか、叔父の顔がほくそ笑んだように映った。 「だって瑞穂。水村さんが流産した場所は上村さんのアパートだったんだよ。それも例の警察官が立ち去った後だそうだ」 辛そうに叔父は言った。 「ってことは上村さんも水村さんの子供が邪魔だった訳か?」 「出世するために上司の娘さんと婚約したのだとしたら有り得る」 イヤ、違う。近所の目があるんだ。水村さんだけでなく、警察官を自宅に入れるか? 何か裏があると俺は思った。
/230ページ

最初のコメントを投稿しよう!

47人が本棚に入れています
本棚に追加