表の顔と裏の顔

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 「スタンガンは和也さんが購入した物だったよね? 問題はそれが何処に保管されていたかってことだ」 「もしかしたら濡れ衣か?」 「ヤだな叔父さん、俺に解る訳がないだろう」 「聞いた俺が馬鹿だったな」 ふっ、と笑いながら叔父が呟く。 「でももし、和也さん以外の誰かが知っていたとすると……」 「その点、水村さんは対象から消えるな。和也さんは慎重派だったそうだから自宅には招かないだろう」 「俺もそうであってほしいと思うよ」 「スタンガンは20万ボルトの電圧だ。其処からは拾った高校生の他にもう一人の指紋しか検出されなかったそうだ。でも二人共マエがなかったそうだ」 「それじゃおかしいよ。和也さんはその前にあの警察官に連行されたんだったね。だったら指紋くらい採取すると思うけど」 「そりゃそうだけど、全員が指紋を採取される訳じゃない」 「叔父さん。和也さんは大麻を隠し持っていたから連行されたんだろう?」 俺の発言に叔父は黙ってしまった。  「もしかしたらハシリドコロは和也さんか? 上村さんがあの翌日血液検査をしたそうだ。ロートコンの成分はヒヨスチアミンとスポコラミンでアルカロイド系猛毒だ。それが検出されたようだ」 「だから、あのメモか?」 「和也さんが仕掛けたと思ったのかな?」 「だとしたら? 瑞穂、この事件は和也さんの逮捕だけでは済まなくなる」 それは俺の女装依頼だった。 俺は初めて、単独で探偵として動かざるを得なくなったのだ。 女装して叔父と一緒に外出したことはある。 場に慣れることや俺に合った靴選びだった。 花柄のワンピースにゴツイ男物のスニーカーは似合わないからだ。 結果、パンプスの選択となった。 俺はそれを此処へ来る度に履かされていたのだ。 「これが、和也さんの自宅近くに住む奥様方だ。そして此方が上村さんのだ」 叔父はコンパクトディスクから印刷した写真を俺に渡した。 「先ずはファミレスだ。お喋りするはずだから行ってくれ。いいか、くれぐれも深入りするなよ」 叔父はそう言いながら女装を済ませた俺を送り出した。
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