ボーンヘッド・木暮敦士side

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 スカル…… 頭蓋骨…… 髑髏…… でも今の俺はまさにこの形なのだ。 俺の目の前にあるのは、スキンヘッドにピアスだらけの…… 俺の頭だった。 妻はヘアーメイクアーチストだ。 だからスキンヘッドなんてお手の物だったんだ。 (今まで金髪だったからきっとみんな驚くぞ) そう思っていた。 マジで……  俺の成功は、妻にとっても幸せなことだと今の今まで信じていた。 だけど、名前と顔が売れてきたことによって余計な心配事も増えてきたのだった。 その一つが、ストーカーとパパラッチだ。 人の後を着けて決定的な瞬間を物にしようとする連中のことだ。 もし、ストーカーに言い寄られた現場でも押さえられたら…… 俺は常に、そんな状況下に身を置いていたのだ。 スキャンダル一つで這い上がれないほど深い奈落の底に投げ込まれるのが常だ。 男女の関係などもってのほかで、食事を一度しただけで熱愛報道に繋がる世界だった。  だからマネージャーがあれこれ煩いんだ。 ロックグループなのだから、一昔前だったらグルーピーなんて当たり前の世界なのに…… グルーピーと言うのは熱狂的なファンの総称で、今の追っ掛けみたいな存在だ。 その一部は肉体まで提供する。 実際に、男女の関係に漕ぎ着けて結婚した人もいるそうだ。 だからそれをあやかろうとしてあれやこれやと仕掛けてくる人もいるそうだ。 マネージャーは妻をそんな人間だと決めつけているようだ。 俺達の関係も、恋の始まりも知らないくせに……  その時…… エレベーターが開いた。 「ギャーー!!!!!!」 大悲鳴が聞こえる。 でもその途端、俺の頭は見えなくなった。 (俺は死んだのか? なあ、俺の頭は今何処にある? 誰か教えてくれー!!)  次の瞬間。 俺は垣間見た。 俺の頭が、まだエレベーターの前にあることを。 (鏡か!?) 俺はやっと、理解した。 怖い物見たさとでも言うのだろうか? 俺の目は又くぎ付けになった。 それでも俺は続々と集まってくる野次馬達にも目を向けていた。 次第に固まっていく体と格闘しながら、脳を最大限使おうとしていたのだ。 俺はソイツ等を鏡の中から垣間見ようとしたのだ。
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