小雨の妖精(Ⅰ)

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すると突然あれが現れた。突然といっても瞬間的に現れたのではなく、暗順応ように少しずつ私の目に映るように現れた。 あれは、図書館に寄りかかるように植えてある木々のうちのひとつ、座っている私の位置から一番近い木の枝の上に立っていた。 体全体は雪のように真っ白で、大きさは15~20cmくらい、両手、両足があって、かわいらしい小人のような体裁をしていた。 その時私はとうとう自分の頭がおかしくなったのかと思った。 何回も強く瞬きをしてみた。何回も強く目を擦ってみた。夢かと思って漫画のように頬をつねってみたりもした。 しかしあれが消えることはなかった。 だんだん不安になってきた私は怯えた獣のように、ゆっくり辺りを見回してみた。 前の席の人も、自分の席の横を通っていく人も、私以外誰もそれに気づいてなかった。 いや、気づいていなかったのではない。それは私の願望だ。実際は私以外、誰も見えていなかったのだ。 私は錯乱状態に陥った。息遣いや鼓動が荒れ、上半身全体が脈を打ちはじめた。
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