小雨の妖精(Ⅰ)

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しかし不安はそこがピークで、その後は徐々に落ち着きを取り戻していった。なぜだか分からないが、あれを見ているとだんだん不安が無くなっていった。 あれは木の高いところに登ってみたり、少し降りてみたり、葉をつついてみたり、枝の上を走り回ってみたり、まるで小動物のように、しかし小動物ほど速くないスピードで動き回っていた。 その時、私はそんな光景に癒されたのだろうか。確かに女子大学生の胸を射止めるほどのかわいさをあれは持っていたし、私もちょっと変わっているとはいえ、並の女子大生のようにかわいい物には目がなかった(OLである現在も目がない)。 しかしそれだけが理由ではないであろう。いくらかわいい物に目がないからといって、ついさっき会ったばかりの現実離れしたものに対して、ここまで心を許すとは思えなかった。 そんなことを考えているうちに、私の心はどんどん穏やかになっていった。徐々にあれの虜になっていった。その気持ちを促すかのように、イヤホンからは穏やかで愛らしいメロディーが鳴り響いていた。 その感情は普段では味わうことのないものだったのかもれない。   かもしれない。 言い切ることはできない。しかしそこには言い切れない素晴らしさがあった。 とにかく私はその時あれに会った。そしてあれに魅了された。
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