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しかしそんな私の心とは裏腹に、あれは徐々に消えかかっていた。それに初めて気づいたのは12月に入ったばかりの頃だった。
その日は久しぶりの小雨だったため、次の講義まで暇だった私は軽快な足取りで図書館のあの席にいくと、あれの様子がいつもと違うことに気がついた。
あれがいつもより透けているように見えたのだ。
高いところに登ったり、少し降りたり、走り回ったりとする動作も、いつより鈍く感じた。生気が前よりないように見えた。
私は不安に陥った。
「あれが消えてしまう」
私の中にあったあれに対してひそかに抱いていた思い、豆粒のように小さいが確かに心にあった、しかし見ないようにしていた感情。それが膨れ上がりその他の感情を押しのけながら表面に出てきた。
[儚い]
いや、しかしまだ決め付けるのは早い。もしかしたら調子が悪いのかもしれない。次会ったときは、元通りになっているかもしれない。
「私の感は当てにならないから」、私は自分のその感が何かの拍子で間違って出てきたものだということにした。
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