占い師と私

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「お願い、占って」  数日後、私は千円札を三枚、テーブルに叩きつけていた。占い師の向かいに勢い込んで座り、彼女の出方を待つ。けれど占い師は前回のことを何か言うわけでもなく、水晶玉を覗き込んだりタロットを切ったりし始めた。どのぐらいそうしていただろうか、ふいに占い師が顔を上げた。 「あなた……ついてるわ」  私は耳を疑った。なぜなら〝ついてない〟から、藁にも縋る想いでここにきたのだ。あれから毎日、奇怪なことが身近で起こっている。身体が重く、精神状態も最悪だった。 「そんなわけないわ! わたしはついてな――」 「言ってはダメよ!!」  それまで冷静だった占い師が腰を浮かせてまで、言葉を被せてきた。唐突な制止に驚いて唖然と目を瞠る私に、彼女は安堵するように息を吐いた。 「そう、それでいいわ。二度と使わないようにすることね。今のあなたがこれ以上、耐えられるとは思えないから」 「どういうこと……?」 「あなたは自分でも知らない間に言霊を生み出してしまったのよ。つまり霊界からは、〝憑いてない〟――そう聞こえていたの。それはつまり〝憑いて欲しい〟と言っているようなものだったのよ」  背筋がぞっと寒くなり、真夏にもかかわらず私は自分を抱き締めていた。 「あなたは〝ついてない〟と繰り返し言い続けていたのでしょう? だから今のあなたは憑かれているの。それも大勢にね」  心身が不調のはずだと言われ、私はうなずくしかない。 「助けて……どうしたらいいの?」  涙を滲ませた私に、占い師は真面目な顔で言った。 「最初に忠告したでしょう。先祖のお墓参りをなさい。彼らは守護霊となって、あなたに憑くものたちから守ってくれるのですから」
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