占い師と私

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占い師と私

 近頃まったくついてない。会社はクビになるし、彼氏には振られるし、アパートは火事になるし、財布は落とすし――とにかくついてなさすぎる。 「あなた、もう何年もお墓参りをされてないでしょう?」  胸中で毒づきながら歩いていたら、そう声をかけられた。振り向けば、占いの露店が目に入る。夕闇に染まり始めた街の片隅に、妙齢の女の人が座っていた。テーブルに水晶玉やタロットがあることからして、どうやら女性は占い師のようだ。 「そんなこと素人でも推測すれば、ある程度はわかることじゃない」  一回三千円と書かれた札が下がっているのを見て、苛立ちが増した私はぴしゃりと言ってやった。そのまま立ち去ろうと踵を返しかけたとき、なんとその占い師がさらに言い募ってきた。 「例えば会社を解雇されたり、大切な人や場所や物を失ったりはしなかったかしら?」  私は思わず足を止めていたが、占い師の言葉に惹かれたからではない。 「そんなの、この世の中では珍しくないことだわ」  私と占い師の人生はこれで二度と交差することはない、このときはそう思っていたのに。
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