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「一階に、浴室と宴会場があります。浴室のご利用時間は夕方の五時から十時までです。お食事はお部屋にご準備致しますが、それぞれ別々のお部屋にご準備しますか?何方かのお部屋でご一緒になさいますか。」 「全員分、私の部屋で。」 「わかりました。」  窪田は特に威圧的に話しているわけではないが、低音で落ち着いた話し方をするので、まるで脅されているように聞こえる。 「お食事をお持ちするのは、朝は七時半、夜は六時半でよろしいですか。」 「ああ。」  一通り話し終えると部屋の前に着いた。 「二階の南側、三部屋をご用意させていただきました。東側から、二十一号室、二十二号室、二十三号室の順番です。お部屋の造りは全て同じです。」  そこまで説明して、部屋の鍵を三本、番号が見えるように差し出した。  すると、窪田が二十二号室の鍵を取った。すると杉山は二十一号室を、残りの二十三号室を長屋が受け取った。  俺が、二十二号室のドアを開けると三人とも入室した。襖を開け、電気を点けた。  窪田は障子を開け、窓の外を眺めた。この時間帯は人通りも少なく、東から流れる川が見えるだけだ。  杉山は部屋の中をぐるりと回り、戸口に近い畳に正座した。  長屋はバッグとスーツをクローゼットにしまうと、杉山の斜め後ろに正座した。  俺はお茶を淹れ座卓に並べた。何も声を掛けていないのだが、窪田は座椅子に胡坐をかいて座った。
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