吸血鬼文明開化覚書(ヴぁんぱいあぶんめいかいかおぼえがき)

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 現代風に云ったら「飛頭蛮症候群」ってやつでしょうか?  横文字で言やあ「ヒトウバン・シンドローム」ですな。  また、この首が抜ける「ろくろ首」ってのは日本だけにいるわけじゃなく、『三才図会』や『南方異物志』なんていう古い中国の事典を見ますと、中国やヒマラヤの山麓、ジャワなんぞにも住んでいたようなんです。  中にはこう、首が空を飛ぶ時、耳をばたばたと羽ばたかせて飛ぶなんてえのもあります……  ダンボの親戚ですかねえ?  おまけに夜、首だけで飛び出しては虫を捕らえて食べ、暁になると戻って来るってんだから、蝙蝠みたいな連中です。  ああ、蝙蝠といえば、小泉八雲の『怪談』に出てくる奴らみてえに夜になると人間を襲っては血や精気を吸い取るなんていうのもいたもんですから、一説に西洋で云う所の「吸血鬼――ヴァンパイア」に当たるなんてことも言われたりなんかもしてるんでございますよ。  さて、今宵お話しいたしますのは、この飛頭蛮達が海の彼方に「ヴァンパイア」なるお仲間がいることを初めて知った、「明治」という新しい世を迎えようとしていた頃のお話にございます。
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