吸血鬼文明開化覚書(ヴぁんぱいあぶんめいかいかおぼえがき)

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「あぁ! ああ~ぁ…なるほど。あれはそういうもんだったのかい? なんであんな首しまって苦しそうなもんわざわざ巻いてんのかと思ったら、そうか。そうだったのか。んじゃあ、あの時見かけた異人たちはそのバンパイーヤだったのか……でも、首が抜けねえんじゃ、俺達のお仲間って感じがしねえなあ」 「いいんだよ。おめえがそんな気がしなくたって、偉い学のある先生方がそうおっしゃってるんだから。ま、向こうさんも夜な夜な人の血を吸ったりなんかするらしいから、それでお仲間なんだろうよ。それに首は飛ばねえが、蝙蝠に化けて空を飛べるらしいぜ」 「へえー蝙蝠に化けるのかい? 蝙蝠っていやあ、唐の国じゃあ縁起のいい生き物だっていうねえ。ってことは、そのバンパイーヤっていうお仲間も、きっと人の間では縁起がいいっていうんで人気者なのかもしれないね」 「ああ、そうかも知れねえな。ま、俺達よりもハイカラなのには違えねえ。こう洋装なんかも粋に着こなしてな。だからよ。俺達もあちらさんを見習って、異国にも引けを取らねえ文明的な飛頭蛮にならなけりゃあいけねえって話をしてるんだよ」 「ああ、そいつは違えねえ。おいらもハイカラな飛頭蛮になって、最近、『異人さんはお洒落で素敵ね』なんて言っているろくろ首のおろくちゃんに振り向いてもらいたいからなあ……んでも、八っつぁん。それにはどうすりゃいいんだい?」 「ん~そうだなあ。ま、俺達貧乏人にゃあ、値の張る洋装なんかとてもじゃねえが手を出せねえ。てなると、先ずはあちら様を見習って俺達の弱点を変えるってとこからだな」 「弱点? 首が抜けてる間に胴体を隠されちまうことかい? いや~おいらもこの前、近所の悪ガキに胴体を押し入れの中に隠されて危うく死ぬところだったよ」 「違う違う。誰もおめえの間抜けな失敗談なんか聞いちゃいねえんだよ。だからさっきも言った通り、バンパイーヤの首は抜けねえってんだから、そんなもんが弱点なわけねえんだよ。その代わりバンパイーヤにはな、これこいつが死ぬほど苦手だってえもんがいろいろとあるんだ」
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