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そんな私を見ても、彼はニヤニヤしたまま、小首をかしげて、
「このお寺さん、ご利益、縁結びなんだよ」
「そ、なんだぁ……」
「そうだよ。結構、有名なんだよ」
「へー……。イヤ、ただお寺さん、近くならー…、つ、ついでに、お参りもしようかなって」
一瞬だけ、視線をそらして、心で舌打ち、そして泣き。
(ついで、なんて、ご利益なくなっちゃうぅ)
彼は、腰に手を当てて、少し身体を伸ばしながら、階段を眺めて、
「俺も、してこうかな。久しぶりに」
「久しぶりっ?」
(そのときは、誰との縁結びを!)なんて、言えるかぁ!
私の早い切り返しに、彼は、ちらりとこちらに視線を流して、また、ニヤリ。
「言ったじゃん、ご近所さんだもん。折々で、お参りにまいりますから」
「あ、そか」
「ご縁にも、イロイロあるんですよ」
顎を少し引いて、彼を睨んでから、そっぽを向く。
「わかってますよ!」
はっと、すぐに彼へ顔を戻す。
ニヤニヤの顔が、瞳を細めて嬉しそうな表情に変わってた。
それを見ていられなくて、うつむく。
(なによ、なによ! まるで、わかってるみたいじゃない)
私の視線に入るように、彼は左手を差し伸べて、指を〝おいで〟というように動かす。
「一緒に、結びに行こ。ご縁を」
ぴくんと心臓が跳ねて、合わせて肩も上がった。
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