5話 7/5 旅立ちまで後2日

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…もし産まれるのが間に合ったら伝えたい。 …友達はいいもんだよって。 …楽しんだよって伝えてから出発したいな。 「どうした?マジマジと卵を見つめて。」 『この子に伝えたいことがあるんだ。』 「そうか、じゃあ暖めてみたらどうだ?もしかしたら早く孵るかもしんないな。」 …早く孵るって 僕はふと気になる事を思いついた。 『ねぇ!ネル!もしこの子が孵って、僕が旅立ったら、誰がこの子を育てるの?』 「わかんねぇ。ナギも1羽だったんだろ?誰に育てられたか覚えてないのか?」 必死に思い出してみるが、お父さんに育てて貰った記憶は無い。 しかし、食料に困った記憶も無かった。 『食べるのに困った記憶は無いよ。』 「あれか?ナギの父ちゃんが、食料用意して旅立ったんじゃないか?」 『そういう事?』 「明日からじゃあ卵を暖め続けろよ。 オレが子供用に食べ物用意して来てやる! オレ達が居なくなっても、ナギの子供が、元気に育つ様に!」 『本当?』 「ああ。 ナギおまえがいなかったらオレはここにいないし、オレの生まれ変わりって夢は追い続けられなかった。 オレにやらせてほしい! ナギおまえの分の魚もオレが捕ってくる!」 『ネル、、、。 いいの?』 「仲間だろ? 間違えた友達だったな!」 恥ずかしそうに言うネルになんか心が暖かくなった。 『うん。 友達!』 「じゃあ今日はここで寝ないとな。」 『そうだね。 暖めていたら、僕は明日風に乗る練習出来ないよ。』 「大丈夫だ。 あれだけ乗れてれば。 基本あんなに曲がることは島に近づかない限り少ない! 当分は海の上だから乗りながら、更に練習したら大丈夫だって。」 『でも、僕のせいで足とか引っ張ったら、、、。』 「もう何も言うな。 大丈夫だから。 おまえが風から外れてもオレは見捨てない。 オレを信じろ。」 …クジラのお爺さんが言った通りだ。 …友達を信じるってこういうことなんだ。 …これが友達なんだ。 『わかったもう何も言わない。 ただ僕はネルを信じるよ。』 「必ず連れていく! 2羽でトキか、白鳥か、なんでもいいから生まれ変わり、またこの島に帰ってこようぜ!」 『うん。』 なんでかわからない。 ずっと心が暖った。 知らない感情だった。 …この感情を僕は僕の子に教えてから出発したい。 この日僕は卵を暖め続けながら、出発まで後2日の夜は過ぎて行った。
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