幕間

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「モルガナイト…美しい石」  薄い赤紫色に色付いた宝石を手にした石黒ルイは、恍惚の表情を浮かべた。  1911年。マダガスカルにて発見されたこの宝石の名前は、かの有名なJPモルガンの名に由来する。  偉大なビジネスマンである一方、深く芸術を愛したと言われる彼の名を冠したモルガナイト。  無論それだけでなく、他の宝石にもそれぞれに由来がある訳で、それらの事に想いを馳せる時、ルイはとても幸せな気持ちになれた。  石言葉的にモルガナイトは、献身的な愛情を高める石だとされるが、この薄く赤紫色に輝く石には言い得て妙だと思える。  しかしだ。  こんなにも素敵な石なのに、現実は熱処理されて、より需要が見込めるアクアマリンとして《市場》とやらにバラ撒かれるのが多くのモルガナイトの末路だと思うと、欲に取り憑かれた人間とやらを呪ってやりたくなる。 「ああ…またいつもの悪い癖が出ちゃったわ」  宝石に思いを馳せる時、前後の見境が無くなるのがルイの悪い癖で、たまに石狂いとディスられる事もあるが、好きなんだからしょうが無いとルイは苦笑を浮かべた。    その由来が天然鉱物であれ、生物由来であれ、結局の所、宝石は命の結晶体だという認識があるからこそ、こんなにも宝石に惹かれて止まないのだろう。  
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