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序章 始まりは唐突に
「ここか…。」
僕は一軒の古い家を見上げた。
この薄暗い路地裏に似合わず、ちゃんとした造りだ。
大きくて立派な看板もある。
本当に何故、この路地裏にあるのか不思議な話だ。
「とりあえず中に入ろう。このまま突っ立ってる訳にもいかないし」
がらがら、と横引きの扉を開ける。
そして、店内に響く声で叫んだ。
「こんにちは。誰かいませんか」
静かな店内に僕の声だけが響く。
なんだ。もうとっくに閉店した店だったのか。
ちょっと期待を込めて来たけれど、ハズレだったらしい。
僕は肩を落とし、店から出ようとした。
その時、目の前に黒猫が一匹。
僕を意味ありげに見つめていた。
「ど…どけよ。帰れないだろ」
僕の声に怯えもせず、黒猫はただただ見つめてくる。
怖くなり、この場から走り去ろうとした時
店内から声がした
「お帰りなさい、夢乃さん。それと…いらっしゃいませ、お客様」
不思議な雰囲気をまとった女の子が立っている。
いつの間にいたのだろう。まったく気づかなかった。
「どうされましたか、お客様。私の顔に何かゴミでも…」
「い、いえ…何も…」
それなら良かった、と彼女は呟き
僕を中へと招き入れた
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