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「…おい、起きろって。」
「んん……やだ、もうちょっと寝かせて…」
「襲うぞ。」
もう少し、もう少しと我儘を言う仁に少しだけ危機感を持たせようとそう言ったはず。
そう言って、仁のベッドに乗り込んだはず。
「……随分積極的で。」
「なっ……!」
ニヤッと笑われ、俺の方が赤面した。
当の本人は呑気にあくびをしている。
「…おかげでいい目覚めだわ。」
塞いだピアスホールに触れられ、どきっとした。
仁の家に戻った日から、距離感が凄く近くなった気がする。
今更そんな学生でもないし、童貞でもないけど、どうもこう…大切にされるって感覚には慣れない。
「髪、お願いしてもいい?」
仁が、俺の手を取った。
「……なぁ、なんで俺には髪触らせてくれんの?」
「…なんでそんなこと聞くの?」
「辻さんが言ってた、仁は髪を触られるのが嫌だって。」
仁は困ったように頬をかいた。
「……なんでだろうね、自分でもわかんない。
ただ、初めて会った時修吾って俺に興味無さそうだったから、下心無しで接してくれそうだと思った。そんで髪を結ってもらったら、凄い優しい手だったから病みつきになっちゃったんだよねー。」
まあ事実、最初は顔しか興味なかったからな。
「……修吾はなんで、俺がこうやって受け入れようとしても手を出してこないの?」
それはきっと、
仁が本当に俺の方を見てるわけじゃないと、薄々感じているから。
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