123人が本棚に入れています
本棚に追加
/185ページ
菊本の家に住み始めてから、三日が経った。
隙があれば出て行こうとしていたのだが、生憎菊本は忙しくてなかなか家におらず、出て行く機会が無い。
…合鍵を、渡されていない。
だから必然的に、俺が出て行くということは、家の鍵が開けっ放しということになる。
菊本は俺のことを分かりやすい性格だと言った。
だから俺の性格を考えて、俺が鍵を開けっ放しで出て行くことなどないと分かっているんだろう。
…実際その通りだしな。
そこで俺はいい加減行動に出た。
菊本のUピンを2、3本パクり、夕方頃に家を出る。
周りに人が居ないかを軽く確認した。
上と下、計二つ鍵があるが、一つ閉まっていれば十分だろう。
俺は鍵穴にUピンを突っ込み、かちゃかちゃと手探りで弄る。
素人がこんなこと出来るかなんて分からねえけど、適当に弄ってりゃいつかは閉まるだろ。という頭の悪い考えだ。
15分くらい鍵穴を弄っていた時、カチャン。と、音がした。
Uピンを引き抜き、試しにドアノブを引いてみる。
「…ふ……」
ひとまず成功だ。
俺は短く息を吐いた。
財布とスマホはあらかじめ持っていたし、いつものバーに行こう。
……それから、…男も探そう。
二度と菊本に遭遇しないような場所へ、逃げよう。
最初のコメントを投稿しよう!