一章 ムカシノ話

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 返事がない。そのうえどんな力か知らんが、足をいくら動かしても手が離れない。どうやら「一緒に寝ろ」ということらしい。俺は二段ベッドを登るのをあきらめ、沙耶の横に寝転がる。すると沙耶は俺の胸に顔をうずめるようにして寝始めた。その際に、俺の服をしっかりと掴むあたりさすがと言えよう。  二人で一つの布団というのはさすがに狭く感じたが、俺も沙耶もその日は疲れていたのか、あまり気にすることなく、すんなりと寝ることができた。  その日以降、兄さんは俺の前から唐突に姿を消した。
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