二章 シチテン八倒①

2/8
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
「――――え?」 「だからね、君が乗ったのは『【小崖(こが)】行き』で、【東城(とうじょう)】に行きたいならこれとは別の車両だってこと。しかも、真反対だしね」  駅員の女性は「困ったなー」と言って腕を組む。 「どんな用事かは分からないけど、帰るしかないかな~」 「それじゃあ困ります!」 「そう言われてもね~」  彼女はチラッと俺を見ると、「はぁ……」と呆れたようにため息をついた。 「な、なんですか?」 「いや、間違ってたら悪いんだけどさ、」  そう言って彼女は俺を見て、 「もしかして、家出少年?」 「なっ……!?」  なんともピンポイントな質問に思わず言葉を詰まらす。それを見て彼女は「やっぱり……」とまたため息をついた。 「まあ、べつになにも言わないけどさ~」 「ど、どうして分かったんですか!?」 「どうしてって、見れば分かんのよ」  駅員さんってすげぇ。 「で、家に帰るわけにはいかない、と」 「……はい」 「でも行く場所を間違えた、と」 「……仰る通りで」 「この後行く場所あるの?」 「……はは」 「ほんとなにしてんのよ……」  恥ずかしくなって思わず目を逸らす。 「そ、それにしても、人が多いですね」     
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!