一章 ムカシノ話

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「いつもぼーっとしてるからそうなるんだよ、偽委員長」 「ぼーっとなんかしてない! あと、その名前で呼ぶなー!」 「ふふ、偽委員長……」 「沙耶ちゃんまでぇ……」  唯はこの愛称で呼ばれると顔を真っ赤にして怒る。それが面白いので俺たちの間では定期的にからかうことになっていた。 「まあそれは置いといて、待ち合わせ場所に遅れたのはよくないね」  湊は唯をいじるのに満足したのか、俺たちに矛先を変えたらしい。正確には俺個人な気がするのだが。 「待ち合わせするなら遅れないように」 「いや、だから沙耶がだな」 「彰が年上なんだから、しっかりしなくちゃね」 「……はいはい。分かりましたよ」  湊は見た目こそさわやかイケメンだが、その根はかなり黒い。それは唯をからかう時にもうかがえることで、大抵はこいつが最初に言いだす。一度喧嘩になったことがあったが、その時は殺されるかと思ったものだ。 「それじゃあ、暑いしさっそく中入ろうか」  そう言って湊は先に歩いていってしまった。 「……中っつっても、森の中だけどな」  俺は唯と沙耶を連れてそれについていった。     
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