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二章 シチテン八倒①
ガタン、と大きな揺れを感じて思わず体を起こした。その際に上の棚に思い切り頭をぶつけてしまい、バッグが落ちてきた。それが寝起きの頭に直撃する。
「っ……なんて朝だよこんにゃろう……」
目を覚ますどころか気を失いかけない衝撃だった。沙耶にもこんな起こし方はされたことがない。外の廊下からは楽しげな声も聞こえてきているというのに、俺は朝から陰鬱な気持ちになっていた。もう帰ろうかな。
しかし、そんな気持ちもすぐになくなった。
「すげぇ……」
カーテンを開けると、目の前には見たことのない景色が広がっていた。
ビル、ビル、ビル、ビル。高層ビル。ザ・都会。
『ご乗車ありがとうございます。この列車は――』
旅の終わりを告げるアナウンスが流れる。俺はそれを聞いて急いで荷物を整理して個室を飛び出した。
さあ、旅の始まりだ。
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