4人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
花火のできる空き地を求めてうろうろ歩き回っていた僕たちはやっといい感じの原っぱを見つけた。近くに住居はなく騒いでも見咎められることがなさそうな場所だ。ただ街灯もないので火をつけるまで闇の中だった。
皆で買い集めた花火セットの袋をスマホの明かりの中で開け、各自思い思いの花火を取り出して火を点ける。
色とりどりの火が噴き出し始めると辺りは明るくなった。
うおぉーと叫びながら手に持った花火を振り回す奴、残像を楽しむように静かに円を描く奴、音と色の変化を座ってじっと見つめている奴とそれぞれの性格に合わせて遊んでいる。
光の中に浮かぶ顔はみな楽しそうだ。
僕も大好きなねずみ花火を点けて足を跳ね上げてはしゃいだ。
ふと煙の向こうに人影が見えたような気がして足を止めた。じっと目を凝らしてみても僕ら五人の他は誰もいない。
次々と仲間たちの点けていく花火の光と煙に邪魔されながら何度も確認したがやっぱり僕たちしかいなかった。
形を変えながら漂う煙が見せる錯覚なのだと思い、ほっと胸を撫で下ろす。
だが、風に棚引いていく煙の中に再び人影を捉えた。
一人二人ではなかった。
みみがきーんとなり、花火を楽しんでいる仲間たちの笑い声が遠ざかっていく。煙でできた何かがだんだんと近づいてくるのがわかる。
「噴水花火をつけるぞっ!」
「おうっ!」
その大声にはっと我に返った。
火をつけている間、暗闇に沈黙が流れ、やがてしゅうううと豪快に火が吹き上がった。
みなが歓声を上げる。
だが僕はもう楽しむことができない。
誰も気づいていないが、辛うじて光が届いている地面にたくさんの裸足が見えていた。
噴水花火が小さくなって消え、辺りは真っ暗闇になる。
漂う煙はにおいだけで見えなかったが、冷たい気配が僕たちを取り囲んでいるのがはっきりとわかった。
「なんだよ。やめろよ」
という誰かの声がした後、凄まじい絶叫が闇を裂いた。
最初のコメントを投稿しよう!