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だが、社長から彼女は既に退職したと聴かされた。少なからず事の次第が所以になっているのではと苛まれた。しかも、私と何があったかは感づいているようだった。確かにあの日、彼女と関係をもった。もっとも彼女は特段の感想を述べたりはしなかったのも事実だ。私がミシュランの星付きシェフであることを以って何かを期待したのだろうが、当の自分は料理以外にこれというものはなかった。終わってから彼女はダイニングでワインを飲むというのだ。何分、明日の午前、見学の客が来るから此処に泊まるのだと。これもつまりは経費削減とやらで、これから自炊するとも。じゃあここは一つ腕をふるってしんぜようかと冷蔵庫を見せてもらった。幸い卵があったもので、ありあわせのものをトッピングし、オムレツを供した。彼女は悦びそれを食してくれた。その屈託のなさが目に焼き付いているばかりに苛まれるのだ。
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