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不用意だった。そんな私の言葉に彼女はこんな風に応えた。これは俗にいう枕営業なるものか。だとすれば契約をするという含みがある。だが、できるはずなどない。ここのアンケートに年商〇億と記したが、実体は全てといっていいほど固定費と借り入れの返済にあてられた。ミシュランの星をもらい、銀行の勧めに応じ、融資を受け、店舗を増やしたまではよかった。だが、至らないばかりに、多くのスタッフが私の元を離れ同業他社に引き抜かれた結果、立ち行かなくなった。それは全てオーナーシェフとして人徳のなさから起因したものだった。そんな状況を察してか、食材の取引は掛けではなく、現金でとなった。もう資金繰りはつかない。弁護士は会社共々、私に破産を勧めた。そんな折に届いたダイレクトメール。羽振りのいい頃の自分を甦らせてくれた。
それから数日して、私の破産の記事が経済面の片隅に掲載された。弁護士にはシェア別荘の顛末を話した。だがその動機が女と寝たかったとはとても言える訳もなく、ただ魔が差したと適当に言い繕いはしたが。まだ手付金を支払っていない段階は単に契約の申し込みに過ぎず、幾らでも撤回できるとの説明だった。弁護士は代理人として掛け合おうかと言ってくれたが、彼女のことも気になるものだから、自ら赴き弁明し、詫びようと考えた。それというのもまるで図った様に自分に都合のいい感じとなっていたからだ。
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