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「…………っ!」
目が覚めると、見慣れない天井に迎えられた。ゆっくりと横を向くと、お母さんが座っていて、私が動いたのに気付き、
「おはよう。もうすぐ夕方だけど」
と言った。
ここは? と聞く前に、
「体育の時間の後に倒れたんだって。軽度の虫垂炎。それに過労。倒れたのは貧血もあったからみたい」
と言われ、今病院のベッドの上なんだということが分かった。点滴の管が自分の腕に繋がっているのを確認する。
「虫垂炎……」
そうだったんだ。それで……。
納得していると、お母さんがそれはそれは大きな息を吐いた。
「自覚症状はあったの?」
「…………」
「あったのね? 最近食欲がなかったのも、このせいだったのね」
寝たままの私は何も返せず、眉間にシワを寄せて頭を押さえているお母さんをひたすら見上げる。
「きついときはきついって、ちゃんと言いなさい。それに、バイトも減らすか辞めるかしなさい。無理することで後からこれだけ迷惑をかけるなら、最初から〝できない〟って言ったほうがマシだわ」
「…………はい」
「虫垂炎は投薬でしばらく様子を見ればいいみたいだけど、点滴と検査で二日くらい入院することになったわ。お母さんが一緒に泊まるから」
「うん」
私は、自分が病院のベッドにいるという非日常に、予想以上のショックを受けていた。そして、脳裏には、先ほど言われた〝迷惑〟という言葉がべったりと貼りついてはがれなかった。
お母さんはひととおり説明をしてくれた後で、いったん家に帰った。いろいろと準備をしてからまた戻ってくるらしい。体がひどく重くて、疲れのせいだか点滴のせいだか、睡魔がまたすぐに襲ってくる。私は目を閉じて、今度は夢も見ずに眠った。
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