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1時間後くらいに目が覚めた私は、夕食の時間まで、慣れない病室のベッドでぼんやりと点滴の液が落ちるのを見ていた。個室ということもあって、廊下をパタパタと歩く足音や遠い話し声以外はわりと静かだ。   来週の体育祭……出られるのかな。薬で紛らわせるんなら、大丈夫かもしれないけれど。それに、お迎え行けないから、お姉ちゃんは早退したり休んだりしないといけないのか。お母さんも泊まるんなら、夜勤もできないし……。なんか、申し訳ない。 「…………」   大きなため息を吐いて、窓の外を見る。浮かぶ雲の際を濃いオレンジが縁取って、それを背景にして数羽の鳥が飛んでいく。病室では通話以外はできると聞いたので、棚に置かれたケータイを取ってウェブメールを開いた。道孝からは当たり前のようにきていない。 【入院することになったよ。虫垂炎だって】   そう文字を入力してみたけれど、私はやっぱりその内容を消去して、棚にケータイを戻した。 そういえば、倒れた時、変な夢見たな……。   部屋のドアが開いた音が響いたのは、そう思い返した時だった。 「…………」   てっきりお母さんだと思って顔を向けると、甲斐くんだったから驚いた。彼は制服姿で、手にはコンビニ袋を提げていた。 「大丈夫?」   薄く微笑んだ甲斐くんに、 「大丈夫。軽度の虫垂炎だって」 と言うと、 「それ、大丈夫じゃないじゃん。安静にしなきゃ」 と返してベッド脇まで来た。
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