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「……夢。夢を見たんだ、道孝の」 「…………」 「助けてくれたの。倒れた私を抱えて運んでくれた」 「……残念だったね、俺で」 私は「ううん」と首を振る。一旦離れた彼の指が、再び私の頬へとおりてきた。優しいそのひとつひとつの仕草に、温度に、また胸が締め付けられて、自分の心が揺れ動いているのを認めざるをえなくなる。 「…………」 私を助けてくれるヒーローは、道孝じゃないといけなかった。私の頭を撫でてくれるのは、道孝じゃないといけなかった。私が欲しい言葉をくれるのも、私が本音をさらけ出せるのも、全部道孝じゃないといけなかった。なのに……。 「……ハハ。いつも甲斐くんに助けられてる気がする」   私は笑ってそう言った。戻した顔の頬を無理やり上げて、甲斐くんを見る。彼は、私の顔の輪郭に指の腹を添わせたまま、ぴたりと撫でるのをやめた。 「泣けば?」 「え?」 「泣きそうな顔してる」 「…………」 「無理してるの、分かる」 「…………」  
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