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彼に続いて教室を出ると、渡り廊下のところまで移動したところで、 「顔色悪すぎ。あと数日休んだほうがいいんじゃない?」 と振り向きざまに言われる。 もうテンプレみたいに「大丈夫だよ」と返した私は、甲斐くんが渡り廊下の手すりに寄りかかって忠告を続けているのを聞きながら、彼の腕組みしている大きな手を眺めていた。そして、その体温をぼんやりと思い出していた。 「ねぇ」   甲斐くんが私の方へ手を伸ばして、頭頂部の髪をひと筋すくった。 「聞いてる?」 「聞いてるよ」   渡り廊下に微かな風が通り、それははらりと舞った後で元の位置へと戻った。校舎と校舎を繋ぐ2階の渡り廊下。私は、彼の髪が揺れて太陽の光をキラキラと反射させるさまに見とれる。 甲斐くんは、私のことを本当に心配してくれていると伝わる。いつも……助けてくれる。 「…………」   なぜ、彼は私のことを気にかけてくれるのか。なぜ、彼は私に触れるのか。なぜ……私はそのひとつひとつに、心を揺らされているのか。 色味のない風景の中で、甲斐くんだけが鮮やかに見える。久しぶりに登校した今朝からずっと。そしてそれは、私の気持ちを重たくさせる。
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