第4話

５

【元気？　道孝のところも体育祭近い？】
【元気だよ。体育祭もうすぐあるけど、うちの高校はどちらかというと学業優先でそこまで盛り上がってないかな。倫は元気？　勇と藍も風邪ひいてない？】

疲れた体をベッドに沈めて、久しぶりのメール。今日は帰るタイミングを失って本当にギリギリの時間になり、走って双子のお迎えに行った。だから、いつもの倍疲れている。

「元気じゃないよ」

そう呟きながら、メールを打とうとしたけれど、なぜか指は本音のとおりには動かなかった。

【元気だよ。体育祭の練習で毎日充実してる。双子も元気。しょっちゅうダンスを見せてくれるよ。心配いらないよ。道孝も体に気を付けて頑張って】

寝転がりながら送信ボタンを押した私の目は、また壁にかかる写真を捉えた。

なんでだろうか。道孝に「つらい」とか「大変なんだ」とか、正直に言えない自分がいた。以前はありのままで話せていたはずなのに、ここのところ「大丈夫」とか「元気」って言葉を多用している気がする。
気付けば、お薬曲を鼻歌で歌っていた。

「大丈夫。なんとかなる」

いろんなことが少しずつうまくいかないような気がしているけれど、この歌とこの自己暗示でうやむやにする。