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体育祭当日の昼下がり。 走らないといけない競技は出場しないことになった私は、代わってくれたクラスの女子が懸命に網をくぐって障害物競走をしているのを眺めていた。   晴天の下、白いテントがいくつも並ぶそのひとつ、体育倉庫の斜め前。賑やかな音楽と話し声と笛とピストルの音を聞きながら、椅子の上で体育座りをしている。 谷本さんは本部のほうへ行っていて、徳原さんは後ろの席の女子たちと活躍している男子の話で盛り上がっていた。途中までは話に混ざっていたけれど、後輩の男の子の話にまで及んだあたりからついていけなくなった。   待機場所に目を移すと、男子たちが次の競技の騎馬戦に備えている。その中に甲斐くんの姿が見えて、私はまたグラウンドの方へ視線を戻した。 「…………」 トイレに行きたくなったので立ち上がり、テントを抜ける。途中で恵子のクラスのテントの後ろを通ったけれど、恵子はクラスの友達と楽しそうに話していた。10月だけれど、まだ昼間の日差しは強くて、私は影を選んで歩いた。
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