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「なんか……最近、自分で自分が分からないんだ」
呟きのような私の言葉を聞きながら、里平さんは騎馬戦をしているグラウンドへと目をやる。
「道孝のことも、友達のことも、自分がどうしたいのか、どうするべきなのか……分からない」
「逃げ癖がついてるのね。笑ってやりすごしているからだわ」
「…………」
「向き合えるのは自分だけでしょ。小野田さんにも分からないなら、私になんて分かりっこない」
「…………」
ごもっともすぎて、ぐうの音も出ない。
横を向いて重心が移ったからか、私の背中でフェンスがギッと音を立てる。里平さんを見ると、彼女の視線はまっすぐグラウンドのままだった。里平さんの横顔がきれいなのは、里平さんの嫌味が本当にいやだと感じないのは、表情と言葉に嘘がないからだ。
「里平さんに質問なんだけど……」
「もうすぐ出場種目だから、手短にしてね」
「甲斐くんとも道孝とも、本当になんの恋愛関係もないの?」
「ないわ」
里平さんは、一拍も置かずにそう答えた。グラウンドの方から歓声や嘆き声が聞こえる。どこかのチームのハチマキが奪われたのだろう。
「じゃあ、甲斐くんの彼女って誰? 甲斐くんと里平さんは何が原因でケンカしてるの?」
「敦義のことが好きなの? 小野田さんは」
「…………」
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