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『みんな張り切ってるというか、盛り上がってるよね』 「うん」 『大丈夫?』 「何が?」 『なんか今日見てて、ちょっと倫ちゃん痩せたような気がして。周りに合わせすぎて倒れないでよ』 「ハハハ。倒れたらどうしよう」 『そりゃあ、遠くの恋人より近くのクラスメイトだからね。助けるよ』 「またそれ?」   そう返しながら、私は夏休みに至近距離で見た甲斐くんの顔を思い出した。クラスで話すときとは違う大人びた表情が脳裏に甦り、私はコホンと小さな咳払いをする。 『ハチマキ、おそろいだね。当日』 「そうだね」   甲斐くんの声が、耳に心地よい。そのことに若干の怖さを感じて、私は「それじゃあ。頑張ろうね」と言って電話を切った。   ケータイの画面、着信履歴の一番上の〝甲斐くん〟の文字をしばらく見つめる。そして私はベッドに寝そべって、また天井を仰いだ。   〝遠くの恋人より近くのクラスメイト〟……か……。 「痛……」   お腹にわずかな痛みを感じたような気がして、手で何度か撫でる。今日いっぱい走ったからだろうか。私はその鈍い痛みを紛らわそうと、早く寝ることにして照明を落とした。 道孝からはその後の返信はなかった。
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