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駅に着いた私は、道孝の電車が停まる反対側のホームへ行き、ベンチに座っていた。 11月に入った途端に肌寒い風が吹くようになり、私は電車が通り過ぎていくたびに、薄手のカーディガンを羽織った体を縮こませた。   いくぶん早く着いてしまったから、先ほど自動販売機で買ったホットカフェオレを飲みながら時間を潰す。 「…………」 【突然ごめん。どうしても道孝と会って話がしたいんだけど、こっちとそっちの中間地点のS駅で待ち合わせて会えない? 今度の日曜日の午後3時に待ってる】   散々悩んだ挙句、意を決してそんなメールを送ったのは1週間前のことだ。バイトのシフトを調整してもらい、お母さんたちにも、どうしてもお願い、と頼んだ。病み上がりなんだしなるべく早く帰ってきなさいと言われ、なんとか納得してもらえた。 けれども、なぜだろうか、昨日になっても返信はこなかった。だから、 【明日夕方5時までは待ってるね。無理なら、次の日曜の同じ時間に待ってるから】 と、再度メールした。 自分の行動力に不思議な気持ちがする。今までいつも受け身で、何かしようと思っても相手の意見を最優先してきたからだ。めげずに念押ししたメールにもやはり返信はなかったけれど、私はちゃんと道孝の顔を見て、声を聞いて、自分の気持ちと道孝の気持ちを確かめたかった。だから、迷いはなかった。   道孝は何時に来るだろう。来てくれるまで待つ、的な重いことを言っちゃったから呆れているだろうか。でも、きっと来てくれるはずだ。 会ったら、互いに何を思うんだろう。そして、何を言うんだろう。結局シミュレーションは、うまくできずじまいだ。会ってからの自分の気持ちに委ねるしかない。  
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